
手直しが減らない工場の原因とは?直行率と「個数・時間・発生工程」で進める品質改善
良品になっても、利益が残るとは限りません。
製造業の現場では、不良品を手直しして
出荷に間に合わせることがあります。
しかし、最終的に良品として出荷できても、
手直しや選別、再検査に余分な時間がかかれば、
製造原価は上がってしまいます。
品質管理で重要なのは、
最終的に何個の良品を出荷できたかだけでなく、
最初から良品をつくれたかどうかを確認することです。
今回は、手直しが減らない工場で見直したい「直行率」と、
「個数・時間・不良発生工程」の3つの確認ポイントについて解説します。
🏭 手直しして良品になっても利益が残るとは限らない
工場では、不良が発生すると、
「何とか手直しして出荷しよう」
「納期に間に合わせよう」
と現場が頑張ることがあります。
お客様との約束を守るために、こうした対応が必要な場合もあります。
しかし、手直しをして良品になったからといって、問題が解決したわけではありません。
手直しのためには、
不良品を確認する
選別する
手直しする
再検査する
次工程へ運搬する
といった余分な仕事が発生します。
これらの仕事には時間も費用もかかります。
同じ売上でも、余分な仕事が増えれば利益は小さくなります。
重要なのは、手直しして良品にすることだけではなく、最初から良品をつくれる工程へ変えることです。
📊 「直行率」で最初から良品をつくれた割合を確認する
手直しの問題を見えるようにするために役立つ指標が「直行率」です。
直行率とは、投入した製品のうち、手直しをせずに最初から良品として完成した割合を表します。
例えば、100個の製品を投入したとします。
最初から良品になった製品:85個
手直しして良品になった製品:8個
廃棄した製品:7個
この場合、最終的に良品として完成した製品は93個です。
そのため、最終的な良品率は93%になります。
しかし、手直しをせずに最初から良品になった製品は85個です。
直行率は85%です。
同じ100個を投入していても、最初から良品になった割合を見ることで、手直しによるムダが見えてきます。
🔍 最終良品率だけでは手直しのムダが見えない
例えば、2つの工場があったとします。
A工場は、100個投入して93個が最初から良品になりました。
B工場は、100個投入して85個が最初から良品になり、8個を手直しして良品にしました。
どちらも最終的な良品数は93個です。
しかし、B工場では8個分の手直し作業が発生しています。
手直しに時間がかかれば、その分だけ余分な原価が発生します。
最終良品率だけを見ていると、この違いが分かりません。
だからこそ、最初から良品をつくれた割合である直行率を確認する必要があります。
💰 同じ良品でも製造原価が違う
例えば、本来100円の原価で完成する製品があったとします。
しかし、不良が発生し、次のような追加作業が必要になりました。
通常の製造原価:100円
不良確認:10円
手直し:30円
再検査:10円
合計原価:150円
この場合、最終的には同じ良品になっても、原価は50円増えています。
販売価格が同じであれば、その分だけ利益は小さくなります。
手直しが日常的に発生している工場では、こうした余分な原価が積み重なっている可能性があります。
⏱️ 手直しに使った時間を見えるようにする
手直しによる損失を把握するには、追加作業に使った時間を確認することが重要です。
例えば、
手直し作業
不良品の運搬
良品と不良品の選別
再検査
廃棄品への対応
といった仕事です。
これらに1日2時間かかっていたとします。
月20日稼働であれば、
2時間 × 20日 = 40時間
になります。
つまり、毎月40時間が、本来必要のなかった仕事に使われていることになります。
この時間を減らすことができれば、追加生産や残業削減などへ振り向ける余力が生まれます。
💡 手直し時間を減らすだけでは利益は増えない
ここで注意したいのは、手直し時間を減らしただけで、必ず利益が増えるわけではないことです。
例えば、毎月40時間の手直し時間を20時間に減らせたとします。
20時間の余力が生まれました。
しかし、その時間が別のムダな仕事に使われてしまえば、利益改善につながらない可能性があります。
重要なのは、生まれた時間の使い道です。
追加生産に使う
残業を減らす
外注していた仕事を内製化する
ボトルネック工程を応援する
といった形で、工場全体の成果へつなげる必要があります。
改善で時間を生み出すことと、その時間を利益へ変えることは別の仕事です。
🔍 手直しが減らない工場で確認すべき3つのポイント
手直しによるムダを減らすために、まず確認したいのは次の3つです。
① 個数
② 時間
③ 不良発生工程
この3つを確認することで、どこに問題があり、何を改善すべきかが見えてきます。
① 📦 最初から良品になった個数を確認する
まずは、投入した製品の結果を分けて確認します。
最初から良品になった個数
手直しして良品になった個数
廃棄した個数
この3つです。
例えば、100個投入して、
最初から良品:85個
手直し後に良品:8個
廃棄:7個
という結果であれば、直行率は85%です。
この数字を継続して確認することで、最初から良品をつくれる工程になっているかが分かります。
② ⏱️ 手直しや追加作業に使った時間を確認する
次に、手直しに使った時間を確認します。
ここで重要なのは、手直し作業そのものだけを見ないことです。
不良品を探す時間。
運搬する時間。
選別する時間。
再検査する時間。
廃棄処理をする時間。
こうした追加作業も含めて確認します。
例えば、
手直し:60分
選別:20分
再検査:20分
運搬:10分
であれば、合計110分です。
この110分は、最初から良品をつくれていれば発生しなかった可能性のある仕事です。
手直しによる損失を時間で把握することが、生産性向上への第一歩になります。
③ 🏭 不良を発生させた工程を確認する
三つ目は、不良が発生した工程を確認することです。
ここで注意したいのは、不良を発見した工程と、不良を発生させた工程が同じとは限らないことです。
例えば、最終検査で傷が見つかったとします。
しかし、その傷は、
前工程の加工中に発生したのか
運搬中に発生したのか
組立中に発生したのか
保管中に発生したのか
分からないかもしれません。
最終検査で不良を発見したからといって、最終検査工程だけを改善しても、不良そのものは減りません。
実際に不良を発生させた工程を調べることが重要です。
🔧 手直しを繰り返すのではなく、不良をつくる工程を変える
手直しが減らない工場では、不良が発生するたびに同じ対応を繰り返していることがあります。
不良を発見する。
手直しする。
再検査する。
出荷する。
そして、また同じ不良が発生する。
この繰り返しでは、手直しの仕事はなくなりません。
重要なのは、不良をつくる原因へ手を打つことです。
例えば、
良品をつくる条件は明確か
合格・不合格の判断基準は統一されているか
工具や金型が摩耗していないか
作業方法にばらつきがないか
作業者が正しい方法で作業できているか
を確認します。
そして、原因に合わせて製造条件や作業手順を改善します。
目指すのは、手直しが上手な工場ではありません。
最初から良品をつくれる工場です。
📈 日産計画は「数量+時間」で管理する
手直しによるムダを見つけるには、日産計画の管理方法も重要です。
例えば、ある日の生産計画が、
100個
480分
だったとします。
実績が、
100個
540分
だった場合、予定数量は達成しています。
しかし、作業時間は60分多くかかっています。
この60分の差には、
手直し
再検査
不良品の選別
設備停止
段取りの遅れ
などが隠れているかもしれません。
数量だけを見ていると、こうした問題を見逃してしまいます。
日産計画では、予定数量と予定時間の両方を確認することが重要です。
📊 計画と実績の差から改善テーマを見つける
日産計画で数量と時間を管理すると、改善すべき場所が見えてきます。
例えば、
計画480分
実績540分
であれば、60分の差があります。
その原因を確認した結果、手直しに40分、再検査に20分かかっていたとします。
この場合、改善テーマは明確です。
なぜ手直しが発生したのか。
なぜ再検査が必要になったのか。
どの工程で不良が発生したのか。
このように、計画と実績の差から問題を見つけ、具体的な改善へつなげます。
改善テーマを思いつきで探す必要はありません。
毎日の生産管理の中に、改善すべき問題が隠れています。
🤝 現場の頑張りに頼り続ける工場から脱却する
不良が発生しても、手直しして納期に間に合わせる。
こうした現場の頑張りによって、お客様との約束が守られることがあります。
その努力には感謝する必要があります。
しかし、その頑張りが毎日の前提になってはいけません。
手直しをするために残業する。
不良品を選別するために人を集める。
再検査のために次の仕事が遅れる。
この状態が続けば、工場全体の生産性は上がりません。
管理者が考えるべきなのは、現場にもっと頑張ってもらうことではありません。
余分な仕事そのものを減らすことです。
そして、生まれた時間を、
次の生産
人材育成
設備の予防保全
工程改善
など、工場の将来につながる仕事へ振り向けます。
📋 今日からできること|手直しが続く製品を1つ選ぶ
最初から工場全体の不良を調べる必要はありません。
まずは、手直しが繰り返されている製品を1つ選びます。
そして、1週間だけ次の3つを確認してみましょう。
① 個数
最初から良品になった個数、手直しした個数、廃棄した個数を記録します。
② 時間
手直し、選別、再検査、運搬などに使った追加時間を記録します。
③ 不良発生工程
どの工程で不良が発生したのかを確認します。
発生工程が分からない場合は、工程ごとの確認方法を見直します。
その結果から、最も改善効果が期待できる問題を1つ選びます。
🎯 改善は担当者・期限・結果まで決める
問題を見つけただけでは改善は進みません。
例えば、
工具の交換基準を見直す
作業手順を変更する
判断基準を写真で示す
設備条件を確認する
といった具体的な対策を決めます。
そして、
誰が担当するのか
何を変更するのか
いつまでに実施するのか
どの数字で効果を確認するのか
を明確にします。
改善後は、
直行率が上がったか
手直し時間が減ったか
追加作業が減ったか
予定時間内に生産できるようになったか
を確認します。
対策を実施したことではなく、実際に結果が変わったことが重要です。
💰 直行率は利益改善につなげるための指標
直行率を計算すること自体が目的ではありません。
直行率を確認することで、手直しや再検査に隠れていた余分な仕事を見つけます。
そして、その原因を改善します。
その結果、
手直し時間が減る
再検査が減る
材料のムダが減る
残業が減る
生産能力に余力が生まれる
といった変化が期待できます。
さらに、生まれた時間を追加生産や外注費削減などへつなげれば、利益改善にも貢献できます。
直行率は、工場の利益を増やすために使う数字です。
🚀 改革でつくる・改善で磨く・定着で自走させる
工場学では、工場改革を次の3段階で考えます。
改革でつくる。
改善で磨く。
定着で自走させる。
手直し削減も同じです。
まず、直行率や追加作業時間、不良発生工程を把握できる仕組みをつくります。
次に、その数字から問題を見つけ、不良が発生する工程を改善します。
そして、現場自身が計画と実績の差に気づき、原因を考え、改善を続けられる状態へ定着させます。
手直しを繰り返す工場から、最初から良品をつくれる工場へ変えていくことが重要です。
🏁 まとめ|手直しを減らし、最初から良品をつくれる工場へ
不良品を手直しして良品にすることは、納期を守るために必要な場合があります。
しかし、手直しや選別、再検査が増えれば、その分だけ製造原価が上がり、利益が小さくなります。
手直しが減らない工場では、次の3つを確認することが重要です。
① 個数:最初から良品になった数、手直しした数、廃棄した数
② 時間:手直しや選別、再検査などに使った追加時間
③ 不良発生工程:実際に不良をつくってしまった工程
この3つを確認することで、見えにくかったムダが明確になります。
そして、不良の発生原因へ手を打ち、最初から良品をつくれる工程へ改善します。
大切なのは、直行率という数字を出すことではありません。
直行率を高め、余分な仕事を減らし、生まれた時間を利益につながる仕事へ変えることです。
改革でつくる。
改善で磨く。
定着で自走させる。
「手直しして良品にする工場」から、「最初から良品をつくれる工場」へ。
この考え方が、品質管理を生産性向上と利益改善につなげるための重要な一歩です。